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グノーシス用語辞典(な行)

グノーシス用語辞典

七人
 ヘレニズム時代に一般的に七つの領域と見做されていた月、太陽、金星、水星、火星、木星土星が神話論的に擬人化されたもので、中間界以下の領域の悪しき支配者(アルコーン)。ギリシャ語魔術文書や広範なグノーシス主義文書に、それぞれ隠語化された名前で登場する。『ヨハネのアポクリュフォン』に列挙される名前は、黄道十二宮を同様に擬人化した「十二人」と一部重複するが、七という数字は、一週間の日数として説明される。同時に、七人のそれぞれが男性性と女性性の「対」関係が置かれる。『この世の起源について』では、ヤルダバオートを含めて総称的に「アルコーンたち(アルコンテス)」、「支配者たち」、「権威たち」と呼ばれ、カオスから男女(おめ)として出現する。ナグ・ハマディ文書以外では、マンダ教文書にまったく独自のマンダ語の名前で頻繁に登場する。エイレナイオス『異端反駁』のセツ派についての報告、オリゲネスの『ケルソス駁論』、エピファニオスの『薬籠』のフィビオン派についての報告などにもさまざまな名前で登場する。七つの惑星の述べ方の順番(特に太陽の位置)については、ストアや中期プラトニズムなどの学派哲学の宇宙論においてさえ諸説があったため、グノーシス主義文書に隠語で言及される「七人」が、それぞれどの惑星に対応するかは一概に決められない。

肉/肉体/肉的
 宇宙と人間を、霊的なもの、心魂的なもの、肉的(物質的)なものの三分法で考えるグノーシス主義の世界観における最下位の原理で、「物質」あるいは「泥」と同義であることが多いが、エイレナイオス『異端反駁』の報告におけるヴァレンティノス派の教説に見られるように、泥から由来する身体と区別して、四分法的に語られることがある。『フィリポによる福音書』は一方で肉体の無価値性を断言するが、他方で「肉にあって甦ることが必要である」とする。『復活に関する教え』は置いた肉体を胞衣(えな)に譬える。

ノーレア
 『アルコーンの本質』では、アダムとエバがセツを産んだ後にもうけた娘で、理屈ではセツの妹であると同時に妻であるという近親婚的関係にあることになる。しかし、同書ではむしろノアの妻であることが前提されていると思われる。この二系統の表象はその他のグノーシス主義文書の間にも認められる。エイレナイオス『異端反駁』とエピファニオス『薬籠』に報告されているセツ派は前者であり、また同書のエピファニオスによって報告されている『ニコライ派』とマンダ教は後者に属する。特に後者の表象系統では、ノーレアは夫のノアがこの世の支配者であるアルコーンに仕えたのに対して、超越的な神バルベーローに仕える存在であり、ノアが造った方舟に立ち入りを拒まれると、三度までもそれを焼き払ったという。ヘレニズム期のユダヤ教のハガダー(物語)伝承にも、ナアマという女性が一方ではセツの妹かつ妻として、他方ではノアの妻として言及される。ノーレアという名前は、基本的にはそのナアマがギリシャ語化したものとする説が有力である。ナグ・ハマディ文書の中では『ノーレアの思想』と『この世の起源について』に言及がある。